杉本憲相・堀江たくみ・宮下サトシ「わたしはお皿に落書きをしません。」
2018年11月1日 – 12:55 AM

 

壊れてしまったものや役割を失ったものはやがて風化して忘れ去られていく。元は何かの一部だった、なにものでも無くなってしまったそれらを僕たちは何と呼べばいいのか分からない。確かに存在しているけど、なんだか分からないもの。
イメージとしてのキャラクターもまた、生死や存在の有無を人間の僕らが判断することが難しくて曖昧だ。
両者が重なって見えた時、僕は瓦礫や不要物を集め始め、それらにキャラクターの身体の一部を描き入れ始めた。バラバラの瓦礫や故障したPCは物理的には不可逆なはずであるが、キャラクターの身体を描き入れることでそこになんとなく「再生」とか「再起動」のようなイメージが浮かび上がる。
けれどもそれは決して壊れたものを元に戻すことも再構築することもなく、生と死の間を彷徨う曖昧な物体になる。死に切れずにこの世に無理やり留められてしまったゾンビとか亡霊みたいに。
そんな歪な成れの果てのような物体を見て、やっと人は「モノ」の記憶や過去に思い巡らせるのではないだろうか。
地元の田舎では空き家が増え、取り壊されていく家も増えている。東京ではオリンピックに向けて目まぐるしく風景は変わっていく。
僕の制作は忘れ去られていく風景やものをめぐる想像力を取り戻すための方法である。

杉本憲相

 

 

陶芸は強い力でぐしゃぐしゃにされるようなことがなければ、1万年は余裕で存在できます。だから表面に描かれた模様やキャラクターは、この国の文化が失われて、言葉が失われて、国自体が滅んでも残ることになります。どこかで見たようなキャラの眼をしている陶石は、眼ではなく何かの数式に使う記号だと勘違いされたりするのか、日本語が無くなった世界で大丈夫と描かれた陶板は何が「大丈夫」なのか。

僕が陶の表面にキャラクターを描き出したのは大学院を卒業したあたりからです。最初は大学院の頃にやっていた技法を継続するのが嫌だから、新しい作風に取り組むために自分がいつも描いてるキャラを描くぞ~くらいの軽いノリで始めたのですが、そこで早々に壁にぶち当たりました。素焼きした作品に呉須(陶芸の絵付けで最も一般的に用いられる青色に発色する顔料)でどれだけ頑張って描いても、ぜんぜん様にならなかったんですね。筆の扱いがヘタクソというのももちろんあるけど、根本的に僕の描くキャラが土という物質に合ってくれてない。それならばキャラが心地良く居られるように土をいじらねばならない、そこから現在の個人的なテーマにしている、「キャラクターにとってほどよい焼きものの居場所(表面)を成形や装飾技法から探る」制作が始まりました。それからほどなくして、絵と土を一体化させるようにガサガサとした質感で焼き上げる技法を見つけたり、最近ではカラーの下絵の具でもったりとした線でキャラを描いたり、Gペンを使うなどして落書き性を高めて、キャラがより縦横無尽に土に居られるように出来ないか試したりしています。

芸術作品を当時の様子を伺い知るためのツールにするとしたら、人間の寿命よりはるかに長く残ってしまう陶芸というのは、むしろ誤解を発生させる可能性の方が高いのではないか、と思います。表面が細かく立体的に装飾された縄文土器を、祭礼時のみに使う道具と捉えるか、日常雑器として捉えるかで、想像される縄文時代が大きく異なった光景になってしまうように、僕が表面に描いたキャラクターたちが長い年月の先で歴史家の想像力によって思わぬ「現代の様子」を描かせてしまうかもしれない。何千年も経った世界、キャラ文化が変遷しまくった先で見られる僕の描いたキャラクター達は、これが当時の人類の姿だ!などと、もしかしたら言われたりするのでしょうか。さすがにそこまでは無いとは思うけど、自分が死んだ後の世界のことだし、それくらい自由に妄想してる方が楽しいですね。

堀江たくみ

 

 

既製品の陶磁器、器物を再焼成し、組み換え、自分の作品の一部として上書き保存する行為を「器仏尊廻」と名付け、このシリーズを中心に発表します。
本来土の塊である陶磁器と、太古の壁画から脈々と続く「グラフィティ」の関係性や、工業製品と美術、工芸の差異。
上書きされた作品の「作者の境界線」に着目して制作しました。

宮下サトシ

 

 

【展覧会概要】
展覧会名:「わたしはお皿に落書きをしません。
会期:2018年11月21日(水) – 11月27日(火) ※会期中無休
開廊時間:15:00-20:00
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ五反田アトリエ
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
※こちらの会場は「ゲンロンカフェ」ではございませんのでお気をつけください。

出展作家:杉本憲相、堀江たくみ、宮下サトシ

オープニング
11月21日(水)18:00〜