ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校 第4期生展覧会グループC『まさにそうであることの嚥下』
2018年10月31日 – 5:51 PM

ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校についてはこちら↓
http://school.genron.co.jp/gcls/

アーティストとしてだけ生きているわけではないけれど、しかし作品を作ってわざわざ見せる私たちにとって、アートはアーティストたちのものであっても、だからといって私たちが一人一人暮らしている個人的な現実にだけ有効なものであってもならない。
それらがいびつに共にしているおおきな現実のなかで一つの「まさにそうであること」として、かたち作られるべきではないだろうか。
私にとって現代美術は、そのジャンルを自警するために使うものではない。
複数に制度化された現実からはみでたどうしたらいいかわからないすがたかたちと、そのまま居合わせることができる現実を勝手に追加するためのひとつの方策である。

私たちは自分たちに共通のテーマやキーワードを設けた一つの展覧会を作るのではなく、それよりも7人の作家たちでばらばらのテーマの作品を持ち寄った展覧会を作ることにした。
ならばせめて、指針だけは持っていようということで「まさにそうであること」という言葉を私がその箇所にはめた。
「嚥下」というあまり聞きなじみのない言葉が、参加作家の一人であるF・貴志から展覧会タイトルを決める話し合いの場で提案されたとき、同じく参加作家の一人の谷本美貴子が「おくすり飲めたね」という商品のことを話してくれた。
「おくすり飲めたね」とは、幼い子供が錠剤や漢方薬などの苦くて飲みにくい医薬品の服用をサポートする、チョコレートやイチゴの味がついたゼリー飲料のことである。
子供にとっての漢方薬のような、なかなか飲みこめないものを意気込んでゴクンと飲みくだす。
なんの気なしに行っている飲み込むという行為が意識化されるとき、そのことは少 しかしこまって「嚥下」と呼ばれなおす。
この学校で勉強していることは、ここから帰っていく家のなかにある現実では使わないようなかたちや、言葉でできている。
なぜそんなことを学ぶかというと、私たちにとってそれは、私たちがひとりでに思いついた突飛なアイデアを、もう一人のいる、そしてその家のある現実に、突飛なままでかたちにして持っていくための技術だからだ。
見覚えのない、つかいみちのわからない私たちの作品が、私たちが使いなじんだ現実と違いながらも居を共にしていた「まさにそうであること」で あるなら、それはたとえ私の祖母にも飲み下せるはずだ。
私たち新芸術校第4期生グループCが行う『まさにそうであることの嚥下』は、これまで書き連ねてきたあたりまえのことをあらためて覚悟して、それぞれの技術で実現しようとする7人が集まった、現代美術の展覧会だ。

(國冨太陽)

 

展覧会名:ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校 第4期生展覧会グループC『まさにそうであることの嚥下』

会期:2018年11月10日(土) ~ 18日(日) ※11月11日(日)は講評のため終日休廊
開廊時間:
平日15:00〜20:00 / 土日13:00〜20:00(講評会実施日を除く)

会場:ゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエ
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
Tel: 03-5422-7085
※こちらの会場は「ゲンロンカフェ」ではございませんのでお気をつけください。

出展作家:木村文香 / 國冨太陽 / 小林真行 / 谷本美貴子 / AQ(劇団 芸術治療院) / BB[おおば英ゆき] / F・貴志

本展の講評会や、今後の新芸術校に関連した展覧会予定についてはこちら↓
https://genron-cafe.jp/event/20181111/