大槻香奈個展「家」
2016年12月27日 – 10:00 PM

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大槻香奈 個展『家』

会期:2017年1月7日(土) – 1月29日(日) ※月曜休廊(1月9日はオープン)
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ五反田アトリエ
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
開廊時間:15:00-20:00

【イベント】

◎オープニングレセプション
1月7日(土)18:00-20:00 ※ワンドリンク制

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大槻香奈の個展『家』を開催します。

2007年から活動を開始し、「少女」をメインモチーフとした作品で知られる大槻は、美術家としてもイラストレーターとしても注目を集め、精力的に活動を続けるアーティストです。

常に、自らが身を置く「現代」や「現実」に対して思考をめぐらせ、絵を描くことによって応答を試み続けてきた大槻の作品は、2011年の震災をひとつの大きなきっかけとして、ゆっくりと変遷を遂げてきました。

本展では、「家」をテーマにした新作を中心に構成されます。「家」は、これまで大槻作品のなかで一種の「空虚」の象徴として扱われていた「少女」や「蛹」といったモチーフから連続するものであると同時に、人間や生物ではなく、それらを包み込むことで守りながら、時には閉じ込め縛り付ける、無機的な「容れ物」「殻」でもあります。

2017年で活動10周年迎える大槻の、新たな展開をぜひご高覧ください。

信仰と呪詛  大槻香奈

私は今回「家」を描く。家モチーフに惹かれた理由は、それが自分の中で「空虚」の象徴として存在しているからだ。空虚に関心があるのは、私が生まれてから今まで、特に日本に暮らしていて自分自身やその周りに纏わりついてきたものだからだ。空虚ときくと寂しいイメージがあるかもしれないが、空虚の形を、絵を描くことで確かめ続けてきた事で、それはただ当たり前に存在するものとして、またそれと向き合う事で、これまで生きて来れたような気がしている。
私は空虚というテーマから、突然「家」モチーフに辿りついた訳ではない。空虚を象徴するものは自分の中にいくつかあって、それらを「から」と呼んできた。「から」は「空」「殻」と書く事もあった。そしてそれは、これまで自分の絵の中で「少女」や「蛹」として表れる事が多かった。いずれも生命を生む為の装置、卵のニュアンスを含んでいて、その殻(外見)を描き、空っぽかもしれないし、そうでないかもしれない中身について考え、描いていた。
しかし家は、これまで描いてきた少女や蛹と違って生物ではない。より「から」感のあるモチーフである。家そのものは単なる容れ物のようなもので、そこに人が住めば中身を与える事が出来る。しかし中身があっても、それがうまく機能しているとは限らない。家族や仲間と暮らし、外側からみればいかにも家らしい形(家庭)を保っていても、機能させる事を考えていなければ、その形を保つ事は出来ず、いずれ内側から崩壊する。家は少女や蛹と違って、時の流れの中で勝手に成長する事は無いのだ。
私は今回、家の中身について描くつもりはない。外側の、殻でしかない空っぽの家を描きたいと思っている。よって今回の展示に特別なメッセージ性はないかもしれない。空の殻が描かれているだけだ。けれどもそこに家があれば、考えざるを得ない何かがある。これからを生きていく中で、私達のほとんどは家に住むだろうし、必ず帰る場所としてあるだろう。それはホッとする事なのかもしれないし、一種の呪いのようなものかもしれない。家とは私達にとってどう存在していて、どうあって欲しいものなのだろう。
どうとでもあり得る殻、空虚に触れる装置としての「家」を描き、展示する。