カオス*ラウンジ『サイトスペシフィック疲れと、場所の憑かれ』
2016年11月19日 – 12:01 AM

カオス*ラウンジ『サイトスペシフィック疲れと、場所の憑かれ』
2016年11月25日(金) – 12月11日(日)

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サイトスペシフィックなアートは、疲れる。

長距離を移動し、歩き回り、調査し、対話し、配慮する。他人の土地によそ者として入り、他人の記憶を、土地の歴史を掘りかえし、それらを勝手に加工した「作品」たちを運び込む。
サイトスペシフィックなアートに、疲れはつきものだ。肉体的にも、精神的にも。

2016年は、「地域アートの終焉」のはじまりの年として記憶されることになるかもしれない。ひとつの兆候として、今までは関係者たちの間だけで共有されていた「地域アートの実態」が、とうとう社会問題として報じられはじめた。
町おこしという大義名分のもとに、大量の「若手アーティスト」とボランティアが駆り出され、ただ動員数のみを唯一の評価基準とした「祭り」が繰り返されてきたけれど、そんな虚しい祭りのあとには、一気に疲れがやってくる。
疲れは、様々な問題を誘発する。現場でのトラブル、杜撰なキュレーション、作品の質の低下、、おそらく、地域アートを乱立させてきた日本のアートシーンは、少しずつ、その蓄積した疲れを癒そうとしはじめるだろう。それはやがて、ある種の保守的な「反地域アート症候群」になってゆくかもしれない。

近年のカオス*ラウンジもまた、大規模な展覧会や作品発表を、首都圏から離れた「地域」に限定しておこなってきた。もちろん、すべてのプロジェクトにおいて、何らかのかたちで「地域アート」への批判的視座を設定したつもりではあるが、それとは無関係に、サイトスペシフィックなアートが宿命的にもたらす疲れは、等しくふりかかってくる。

しかし、すべてのプロジェクトが終わり、アトリエ内に山のように積み上げられた、各地から引き上げてきた大量の「サイトスペシフィックなアート」を目の前にして考えるのは、疲れよりもむしろ「憑かれ」とも言うべき感覚についてだった。
それぞれが、固有の「場所性」に立脚したプロジェクトのなかで作られながら、本来の場所から切り離され、ギャラリー空間のなかで宙吊りにされてなお、そこに何かが「憑きもの」のように残存しているように思える感覚。
むろん、それは客観的に見れば「気のせい」でしかないだろう。しかしぼくたちは、それぞれのプロジェクトを通して、あまりにも生々しい記憶や歴史の一端に触れ、そこに深入りしてきた。それは、言ってみれば場所に「憑かれる」経験であり、そのような経験が無いのなら、少なくともぼくたちには「サイトスペシフィックなアート」を制作する動機は生まれない。

本展では、2016年にカオス*ラウンジが関わったふたつのプロジェクト、『瀬戸内国際芸術祭2016』と『カオス*ラウンジ新芸術祭2016』に出品した作品群を、東京のカオス*ラウンジのギャラリーで再構成する。
それは、固有の場所性を持つ「サイトスペシフィックなアート」の破壊であり、「祭り」としての「地域アート」の残骸のようなものかもしれない。しかし、場所に「憑かれ」ることによって制作された作品が、その場所を離れてもなお、「憑きもの」を連れてくるのだとすれば、本展のような再構成によってこそ、それは明らかになるのかもしれない。

近年のカオス*ラウンジの活動の、小さな総括であると同時に、「地域アートの終焉」のささやかな記念碑として。

【展覧会概要】
展覧会名:カオス*ラウンジ『サイトスペシフィック疲れと、場所の憑かれ』
会期:2016年11月25日(金) – 12月11日(日) ※会期中無休
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ五反田アトリエ
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
開廊時間:15:00-20:00
展示作家:秋山佑太、荒木佑介、井戸博章、今井新、梅沢和木、竹下昇平、竹下晋平、藤城嘘、村井祐希、柳本悠花、山内祥太、山本卓卓、KOURYOU、弓塲勇作、ほか
会場設計:秋山佑太、黒瀬陽平
キュレーション:黒瀬陽平

【イベント】
◎オープニングレセプション
11月25日(金)18:00-20:00 ※ワンドリンク制(20:00以降、懇親会あり)

 

※11/25 展示情報修正・出展作家 を更新