ク渦群・羽多野加与 『そんな目で僕を見るな』
2017年6月5日 – 3:00 PM

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この度カオス*ラウンジは、ク渦群と羽多野加与の2人展「そんな目で僕を見るな」を開催します。

ク渦群(くかむら 1993年生れ)は、過去にも何度かカオス*ラウンジの展覧会に参加している若手ペインターである(『キャラクラッシュ!』2014年、『市街劇「小名浜竜宮」』2016年など)。
ク渦群は、様々な風景の中にデフォルメされたキャラクター配置するというスタイルを続けている。ク渦群の描くキャラクターは多くの場合、不穏な風景のなかで、まるで極限状態に置かれているかのように怯えたり、怒ったり、焦ったり、憔悴している。それらは一見、きわめて内向的で私的な風景のように見えるが、あまりにも極端なデフォルメが施されているために、少なくとも鑑賞者がキャラクターと同一化(感情移入)することは難しい。

ところで、ク渦群は福島県南相馬市原町区出身で、今年、東北芸術工科大学の大学院を卒業したばかりである。このように書くと、「震災」や「東北」といった言葉が、ク渦群の作品にまとわりついてくるだろう。それはもちろん、安直で浅薄な読みであるに違いない。

しかし第一に、震災以後、ク渦群の描く平面は、そのキャラクターだけでなく空間までも、あたかも内外から暴力的にねじ曲げられたかのように複雑化していったことは事実である。
そして第二に、震災以後、ク渦群本人が、他者から「被災者」あるいは「被災地出身のアーティスト」として見られてしまうことに対する、少なからぬ葛藤を抱えていたこともまた、事実である。

一方、羽多野加与(はたのかよ 1990年生れ)は、今回はじめてカオス*ラウンジで紹介するアーティストである。ク渦群と同じく若いペインターであるが、ホームグラウンドも作風も全く異なっている(一昨年まで羽多野は関西在住で発表は主に首都圏だった)。
しかし、今回出品する羽多野の、お面をつけたポートレートシリーズは、他者からの眼差しに関わるという意味で、共鳴しているとも考えられる。

お面をつけてこちらに正対するポートレートたちは、自分の眼差しを隠しつつ、他者からの眼差しを慎重に観察する。完全に他者を切断するのではなく、疑いや恐れを抱きながら、半透明のシェルターから外の様子を伺っているのだ。
おそらく、ク渦群と羽多野にとって、他者からの眼差しはある種の「過剰なもの」として捉えられている。ク渦群の作品において、それらの眼差しは、けたたましいノイズとして平面に響き渡り、空間やキャラクターに圧力をかけている。羽多野の作品において、それらの眼差しは、「お面」によって遮蔽されるように見えながら、むしろシリーズのなかで「お面」そのものが強調されることによって、鑑賞者にとっては逆説的に、他者の眼差しを意識させることになる。

絵画はもはや世界への「窓」ではないし、ペインターは絵画を通して世界とコミュニケーションを試みる、という物言いは、現代においてはあまりに楽観的で虚しく響く。ク渦群と羽多野は、そのような虚しさに押し流されながら、自らの作品の内に、世界が乱反射する場所を確保しようとしているようだ。たとえば、ねじ曲げられた風景のなかに。たとえば、お面と顔の間のわずかな暗闇のなかに。

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ク渦群 WEBサイト
http://gnu65.xxxxxxxx.jp/
TWITTER:https://twitter.com/freezepower

羽多野加与 WEBサイト
http://crazy-f0r-y0uandme.wixsite.com/mysite
TWITTER:https://twitter.com/htnky0712

【展覧会概要】
展覧会名:ク渦群・羽多野加与『そんな目で僕を見るな』
会期:2017年6月9日(金) – 6月25日(日) ※月曜休廊
開廊時間:15:00-20:00
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ五反田アトリエ
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
※こちらの会場は「ゲンロンカフェ」ではございませんのでお気をつけください。

【イベント】
◎オープニングレセプション

6月9日(金)18:00-20:00 ※ワンドリンク制
※ク渦群さんはご都合につきオープニングに在廊されず、6月10日・11日・25日のみ全日在廊されます。お二人の在廊が確実なのは現在のところ6月10日と25日(最終日)です。
ご来場の際のご参考にしてください。

【お問い合わせ】
合同会社カオスラ 141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
tel:03-5422-7085 mail: info@chaosxlounge.com