三毛あんり 個展『肖像画展』
2017年3月8日 – 6:00 PM

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三毛あんりの個展『肖像画展』を開催します。

三毛あんりは、「現代の上村松園になりたい」と言う。おそらく、三毛の作風を知る者にとって、その宣言はアイロニーとしか考えられないだろう。しかし、本人はいつでも、そしていたって真面目に、そう言うのである。

上村松園といえば「美人画」である。美人画というジャンル自体は古くからあるが、言うまでもなく、上村松園が描いた大正期の美人画は、それ以前とはまったく異なっている。
近代以降の美人画は、明治期に創設された「日本画」というジャンルのなかに属している。つまり、「日本」という国民国家の構成員が等しく美しいと感じるであろう「美人」という新しい対象を作り出したのである。

もちろん、「みんなが美人だと思う人物像」など、虚構であり捏造である。しかし、初期近代におけるその営みは、「日本」という国民国家を成立させ、それを表象する「日本画」という新ジャンルを創設した日本近代美術の動向とパラレルだ。「日本」や「日本画」と同じように、架空の「美人」が新たに作られなければならなかった。そして上村松園は、そのミッションを完璧にこなしたのである。

さて、やはり三毛は、上村松園的な意味での美人画を描いているわけではない。では、三毛の宣言は、どのように理解されるべきか。手順を飛ばして結論だけ言えば、おそらく三毛は美人画の「ネガ」のようなものを描いているに違いない。

よく知られているように、上村松園が美人画を描いていた同時期、岸田劉生は、土俗的で不気味で猥雑なテイストの表現を「デロリ」の美学、と名づけていた。あたかもバケモノか妖怪のようにおどろおどろしく描かれた少女(麗子像)や花魁、舞妓たちは、当時にわかに成立した上村松園的な美人画の「ネガ」であっただろう。

美人画が描かれるとき、そこには同時に、必ず「ネガ」が現れる(江戸期にも「幽霊画」があった)。三毛の肖像画(それはすべて自画像だという)は、現代の美人画の「ネガ」である。
しかし、であれば三毛は、現代の劉生や甲斐庄であろうとしているのだろうか。そんなはずはない。なぜなら、現代はもうとっくに、上村松園的な美人画を失っているからである。現代において、「みんなが美人だと思う人物像」はでっちあげることすら不可能だ。だとすれば、美人画のカウンターパートとしての「デロリ」もまた、単独では意味をなさない。

おそらく三毛は、上村松園の美人画に、そもそも最初から、幽霊やデロリが入り込んでいることを見抜いていた。「みんなが美人だと思う人物像」と、その周辺に必ず現れてしまう「ネガ」を、同時に描こうとすること。
「現代の上村松園になりたい」という三毛の宣言は、このような意味で受け取られるべきだろう。

【展覧会概要】
展覧会名:三毛あんり 個展『肖像画展』
会期:2017年3月17日(金) – 3月26日(日) ※会期中休みなし
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ五反田アトリエ
〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
開廊時間:15:00-20:00

【イベント】
◎オープニングレセプション
3月17日(金)18:00-20:00 ※ワンドリンク制

三毛あんり 公式webサイトはこちら
http://anrihime.tumblr.com/

【お問い合わせ】
合同会社カオスラ 141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
tel:03-5422-7085
mail: info@chaosxlounge.com