キャラクラッシュ!
2014年10月11日 – 12:59 PM

会期:2014年10月11日(土)〜11月2日(日)の金曜日・土曜日・日曜日
オープン:13:00〜20:00
会場:東京都文京区湯島3-28-10

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今年で5周年をむかえる「カオス*ラウンジ」が、活動拠点としてきたアトリエを会場として「キャラクラッシュ!」展を開催する。

会場となるアトリエは、都内某所に戦前から建つ、築80年以上の木造一軒家である。会期終了後には取り壊しが決まっており、建物全体を使って作り込んだ15名のアーティストたちの新作と、カオス*ラウンジの過去5年間のストックを再構成したインスタレーションが展示される。

本展のテーマである「キャラクラッシュ」は、キャラクター(character)とクラッシュ(clash)をかけ合わせた造語であると同時に、「イコノクラスム(iconoclasm)=偶像破壊」になぞらえた言葉でもある【注】。

今日のキャラクターに見られる奇形的なフォルム(妖怪、怪獣、萌え絵…)や、バラバラにされた複数のパーツの組み合わせによる造形(ロボット、変身するヒーロー/ヒロイン…)、あるいは、「二次創作」における、直接的なキャラクターイメージの破壊、暴力などは、表向きには偶像破壊的な衝動によって為されているようにも見えるだろう。

日本のオタク/ネットカルチャーにおいて、キャラクターのイメージに対する変形、破壊、分裂といった操作は、単なる意匠の問題にとどまらない。既存のキャラクターや物語に何らかの「加工」や「改変」を施すこと自体を欲望したり、ネットワークのなかでキャラクターを無限に分裂し、共有してゆく態度は、キャラクター文化の根幹を支えるものであるし、事実、少なくとも戦後のキャラクター文化の発展は、そのような二次創作的消費を抜きにして考えられない。

とはいえ、日本のオタク/ネットカルチャーが、イコノクラスムの根底にある<偶像を作ること>への禁忌(「汝自己のために何れの偶像も彫るべからず」)を同じように共有しているわけではない。どちらかと言えばむしろ、積極的に偶像を作り、加工し、流通させ、共有することにこそ意味を見出しているようである( 現代から遡って例を挙げるなら、神道における「分霊」と「勧請」の概念や、観音信仰における「変化観音」の発達なども、偶像作り、加工し、増やしてゆくことに対する積極的な姿勢をよく示している)。

キャラクターを何かの「表象」として見れば、紋切り型でキッチュな貧しいイメージでしかないだろう。キャラクターの力は、そのような表象のシステムからズレた場所に宿っている。キャラクターによって何を表象するか、ということよりも、そのキャラクターがどのように加工でき、改変しうるかということ(虚構世界の構築に関わる)、そして、変形を施されたキャラクターが、いかにして流通し、消費され、共有のデータベースに登録されるかということ(現実世界の変化に関わる)こそが重要なのだ。

本展は(というより、カオス*ラウンジは)、そのようなキャラクターのイメージへの人工的介入をおこなうアーティストたちが中心となっている。彼ら/彼女らは、自らの作品によって現実を表象しようとはしない。そのかわりに、キャラクターという記号(エクリチュール)の操作を通じて、虚構と現実の関係性(「アートと政治の関係性」と言い換えてもよい)を再設定し、「公」と「私」の領域をひそやかに侵犯する。表象のシステムに依存することなく、キャラクターの力によって、現実へと介入するのである。

【注】このような言葉の組み合わせについては、2002年にカールスルーエで開催された『イコノクラッシュ ― 科学・宗教・芸術におけるイメージ戦争を超えて』展から着想を得た。