鉄工所跡を改装したside coreのアトリエ 「BUCKLE KÔBÔ」を会場として、 約20組の招待作家たちが出店し、 作品を展示売買する「現代美術ヤミ市」です。
入場料 : ドネーション制 日時:2018年7月21日(土)~22日(日) ※2日間 13:00~21:00 会場: BUCKLE KÔBÔ 〒143-0003 東京都大田区京浜島2-11-7アーギュメンツ / 飯島モトハル / カオス*ラウンジ / カタルシスの岸辺 / 酒井貴史(物々交換所)/ ソノアイダ(藤元明/中村壮志/相澤安嗣志/宮川貴光) / たかくらかずき / 中央本線画廊 / ハムスターの息子に産まれて良かった+カワイタケシ / パープルーム / 柳本悠花 / 山形芸術界隈 / 弓指寛治 / BIEN & 石毛健太 / BLACK TOYS" "US (ADDICT3 / 成田輝 ) / HouxoQue / KOURYOU / Nampei Akaki / SAIAKU ( NAZE / takuya watanabe takuya / 森本悠生 ) × MES / SIDE CORE ...and more
日本には現代美術のマーケットが無い、と言われる。
そして、マーケットがないから現代美術が根付かないのだ、と。 ほんとうにそうなのだろうか。
そもそも現代美術は、ゴミのようなものを芸術にする力を持っている。 それは錬金術のようでもあり、詐欺のようでもある。
だからこそ、同時に、多くの「不信」も招いてきた。
「こんなゴミがなぜ芸術なのか」
「ゴミで金儲けする詐欺」
「なんでも現代美術になる」
「現代美術は言った者勝ち」……
このような外部からの不信に対して、心あるインサイダーたちはまず、 知識による啓蒙や教育によって対応しようとしてきた。
アートのトレンドを追い、アートマーケットのイロハを教え、ついには、国際展やアートフェアの真似事をはじめた。
次に、ビジネスのロジックがやってきた。最初は「あえて露悪的にふるまう」ことのバリエーションだったはずが、
いつの間にか、ビジネスのロジックが優越するようになった。
明治以来の「殖産興業」がゾンビのように復活し、それに群がるギャラリストやキュレーターたちが、本物の詐欺師になった。
そして最初に戻る。
「日本には現代美術のマーケットが無い」
*
この国の現代美術において、啓蒙や教育も、ビジネスのロジックによる
市場の活性化も、ひとつの同じ致命的な問題を抱えている。
それは、すべてが「伝聞」である、という点だ。
確かに、優れた現代美術を見る機会は、以前より増えた。
国際展もあるし、アートフェアもある、最新のトレンドもほとんど時差なく紹介されるようになってきた。
しかし、かつてゴミかもしれなかったそれらが、まさに現代美術に変わったその瞬間に、私たちはまだ立ち会っていない。
それらは、遠く海の向こうのどこかで、誰かによって現代美術へと変えられ、その後に、私たちの前へ運ばれてきたのだ。
それらがまさに、ゴミから現代美術に変わる瞬間、その錬金術を、魔法を、私たちは目撃していない。
現代美術を理解するには、その魔法の現場に居合わせること、
あるいは「共犯」になるのが一番だ。
しかし、この国で「本場」のアートを語る者も、投機対象としての現代美術を説く者も、
誰も魔法を使えない。誰かの魔法について語るだけであり、そのことによって、
現代美術のプレイヤーたらんとしている。それこそ、本当の詐欺でなくてなんだろうか。
*
魔法を使えない人間が何を言おうと、何人集まろうと、現代美術は生まれない。
既存の国際展やアートフェアを模倣しても、マーケットは生まれない。
まず、限りなくゴミに近いマテリアルがある。現代美術はそこからはじまる。
どこからともなく集められたゴミが、アーティストによって魔法にかけられる。
魔法が成功するものもあれば、失敗するものもある。
成功すれば宝になるが、失敗すればゴミのままである。
しかし、重要なのは成功失敗ではなく、アーティストの使う魔法の多様さである。
現代美術の魔法はひとつではない。その魔法の多様さこそ、現代美術の本質であり、
それを目撃できる場所こそ、マーケットと呼ばれるべきなのだ。
そして、その魔法の現場に、プロセスに、立ち会うこと、「共犯」になること。
それが可能な場所こそ、現代美術のマーケットであり、教育の現場であり、
イベントであり、コミュニティなのではないか。
*
残念ながら、このような「現代美術マーケット論」は、この国ではまだ受け入れられそうにない。
だから、ぼくたちは「ヤミ市」として、独自に立ち上げることにした
(注)。
「現代美術ヤミ市 ――限りなくゴミに近いマテリアルの市」は、ゴミが現代美術になる、その魔法の現場として企画される。
アーティストも、コレクターも、
観客も、スタッフも、ゲストも、
立ち会うすべての人たちが、
現代美術の「共犯」となる。
注)「ヤミ市」という言葉を使っているのは、IDPWが主催する「インターネットヤミ市」に影響を受けているからである。
カオス*ラウンジのコアメンバーはかつて、インターネットヤミ市に参加したことがあり、その経験から本企画についての多くのヒントを得た。
黒瀬陽平
(美術家、美術批評家、カオス*ラウンジ代表)