GUIDE:1:鬼ヶ島大洞窟
1-1 村井祐希《倭寇》
※洞窟入り口前のテラスにある野外彫刻です。
1-2 村井祐希《HANGON DAEMON》
1-3 村井祐希《オオニビュー》
2 山内祥太《大海嘯》
第1会場 「鬼の洞窟」
第1会場は、女木島でもっとも有名な観光名所である「大洞窟」です。
戦前、高松の鬼無町で学校の先生をしていた橋本仙太郎が1931年(昭和6年)に発見した、ということになっていますが、これだけ大きな洞窟ですから、女木の島民には昔からよく知られた存在でした。洞窟は自然にできたものではなく、採石によって人工的にできたものです。およそ2000年前の蓮花山採石場(広州)で使われていた採石技術の跡が見られることから、弥生時代から古墳時代くらいの間に掘られたものと推測されます。
2000年前の中国の石工によって掘られ、中世には海賊たちの根城になり、そして近代では仙太郎によって「鬼の洞窟」として「発見」されたこの洞窟は、まさに「鬼=他者」のすみかです。大陸から流れ着く渡来人や、海賊、漂海民たちのいなくなった現代、この女木島にやってくる「鬼=他者」といえば、高松港からフェリーでやってくる観光客たちくらいになりました。
この洞窟もまた、観光客たちのためにFRPで作られた鬼たちが展示されていますが、80年代の観光地化事業で導入された頃のまま、まるで時間が凍りついたかのようです。カオス*ラウンジも、春からスタートしたこの芸術祭で、洞窟のなかにたくさんの作品を展示しました。しかし、洞窟のなかの湿気にやられてあっという間にカビだらけになってしまいました。
彫刻家の井戸博章は木彫の鬼の像を制作し、画家の村井祐希は女木島で拾った漂流物や廃棄物を拾い集めて、巨大な鬼のオブジェを制作しましたが、カビどころかキノコまで生えはじめ、あたかも腐敗したゾンビのようになりました。
映像作家・山内祥太は、3Dの世界で女木島に迷い込む物語を作りましたが、書割りやスクリーンまでカビだらけになったいまの状態では、まるでこの洞窟から脱出しようとしているようかのようにに見えます。夏会期から、井戸博章の《女木島鬼立像》が新たに追加されました。洞窟にあったFRPの鬼を、粘土でそっくりに「模刻」したこの作品は、はじめからカビだらけになる前提で作られています。カビに覆われたコミカルな鬼の像は、もうずいぶん前から「鬼=他者」のすみかではなくなってしまったこの洞窟の姿を表しているのかもしれません。
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3 井戸博章《女木鬼立像》
4-1 井戸博章《天目一箇》
4-2 井戸博章《鬼鬼》