芸術動画ヤミ市
――のマーケット
2019年12月27日(金) 16:00-29:00

参加アーティスト

相磯桃花 一輪社 カオス*ラウンジ 焚き火部 数の子ミュージックメイト 國冨太陽 KOURYOU 小宮麻吏奈 高見澤峻介 中央本線画廊 名もなき実昌 パープルームTV パルコキノシタ 平山匠 藤城嘘 プライベイト ( 五十嵐五十音 大西晃生 カワムラシュウイチ 菊村詩織 楠田雄大 島村吉人 たなかかなめ 番場悠介 ほか、行商人たち) 堀江たくみ 三毛あんり 宮下サトシ ...and more

イベント内容

・出店アーティストによる作品展示、販売、パフォーマンス
・宮下サトシによるヤミ野焼き
・カオス*ラウンジ焚き火部による焚き火+フード&ドリンク販売
・ヤミ市会場から芸術動画ニコ生中継

スケジュール
昼の部※放送なし
16:00~18:00 開場、ヤミ市スタート

夜の部
①18:00~19:00 ヤミ市会場紹介
ヤミ市の各ブースと会場の様子を生中継でお届け。会場に来ることのできない視聴者のみなさんは、ニコ生越しに想像をふくらませて参加した気になろう!

②19:00~20:00 こまんべちゃんねるヤミ市SP新井健、こまんべ
伝説の12時間放送でも波乱を起こした「こまんべちゃんねる」の出張版がヤミ市でも実現!芸術動画主任エンジニアのこまんべと、アーティストの新井健のコンビがお送りするゲーム実況。今回はどんなゲームに挑戦するのか?そしてこまんべは時間内にクリアできるのか?

③20:00~22:00 トークイベント〈サブカルチャー〉が終わったあとの世界 ――10年代の終わりに、思い出す事など
登壇者:さやわか、中尾拓哉、藤城嘘、黒瀬陽平
思えば、ゼロ年代から10年代にかけての20年間は、「サブカルチャー」がゆっくりと終わっていった時代だった。かつて「前衛」や「フロンティア」として機能していた「サブカルチャー」が終わり、バラバラのコンテンツたちの群れへと戻ったのである。そんな時代の後に、我々はいったい何を語り、作るべきなのか。批評家のさやわか氏と、デュシャン研究者の中尾拓哉氏をゲストにお迎えして議論していきます。

④22:00~24:00 焚き火中継
夜の部と深夜の部をつなぐ「焚き火中継」。カオス*ラウンジ焚き火部が、イベント中ずっと絶やすことなく燃やし続けている焚き火の様子を生中継。


深夜の部
①24:00~25:30 ニコ生ヤミ内覧会会場とニコ生視聴者が参加
アーティストと批評家がニコ生でひたすら作品をプレゼンし続けるという、まったく新しい作品販売のかたちを生み出した「ニコ生内覧会」のヤミ市出張版。ヤミ市で展示する作品と、カオス作家の過去作も出品される予定です。ヤミ市会場にお越しの方はもちろん、放送をリアルタイム視聴されている方も、メールフォームから参加可能です。

③25:30~28:30 嘘ちゃんねる2019年年間ベストミュージック
サブスク中毒者である嘘くんが選ぶ、2019年年間ベストミュージックをひたすら紹介し、流し続ける3時間。チルタイムに突入するヤミ市のBGMとしてお楽しみください。>
④28:30~29:00 クロージングトーク焚き火ブースから放送

ゴミ。

いったいどこでゴミが終わり、

世界がはじまるのか。


芸術動画、はじめての年の瀬です。

おかげさまで会員数は300人を超え、少しずつですが、地に足のついた活動ができるようになってきました。 10年代の終わりである今年の美術界は、例年にもまして様々な炎上やスキャンダルが相次ぎ、殺伐とした空気に覆われていたことは、みなさんもご存知の通りかと思います。そんな業界の空気に流されることなく、芸術動画が着実に歩みをすすめることができたのも、みなさまのご支援あってこそ、です。

芸術動画は、ただの配信チャンネル、ネットサロンではありません。カオス*ラウンジのプロジェクト、つまり「作品」でもある芸術動画は、芸術が生み出され、伝えられるプロセスそのものであろうとしています。 そのプロセスを大きく4つに分けるとすれば、「出会い」「制作」「発表」「教育」となります。芸術動画は、4つのプロセスひとつひとつを、番組やイベントの枠組みの中に取り込もうとしてきました。 芸術動画のコンテンツやコミュニティが、芸術を生み出す4つのプロセスと一致し、機能すること。それこそが、わたしたちの指針であり、ヴィジョンなのです。

さて、そんな芸術動画は、はじめての年の瀬をむかえるにあたって「ヤミ市」を開催します。
2018年8月、カオス*ラウンジは「現代美術ヤミ市 ――限りなくゴミに近いマテリアルの市」を開催しました。「現代美術のマーケットがない」と嘆かれ続けているこの国で、本当のマーケットを立ち上げるためには、まさに先述した4つのプロセスこそが重要であり、どれひとつとして欠かすことができません。現代美術ヤミ市は、「ゴミ」が「芸術」に変わる場所で、アーティストとコレクターが出会い、互いに「共犯」となることによってマーケットを立ち上げようとする試みでした。 だとすれば、現代美術ヤミ市は芸術動画の実践と地続きであるだけでなく、一体となってこそ、その真価を発揮するのではないか。そのような考えから、「芸術動画ヤミ市」は生まれました。

サブタイトルの「冬のマーケット」は、ウィリアム・ギブスンの短編SFのタイトルから取っています。ゴミの集積によってできた「マーケット」を舞台に、外骨格を身に纏った記憶のデザイナー、マニュアル通りにやらないと気の済まない編集屋、拾ってきたゴミから「創作物」を生み出す「ゴミの先生」といったキャラクターたちのドラマ、世界観ほど、年の瀬のヤミ市にふさわしいものはありません。 10年代の終りを、芸術動画の新たな試みとともに締めくくりましょう。会員のみなさまのご参加をお待ちしています。





「現代美術ヤミ市」ステイトメント
(2018年7月21日、22日開催)


日本には現代美術のマーケットが無い、と言われる。

そして、マーケットがないから現代美術が根付かないのだ、と。 ほんとうにそうなのだろうか。

そもそも現代美術は、ゴミのようなものを芸術にする力を持っている。 それは錬金術のようでもあり、詐欺のようでもある。

だからこそ、同時に、多くの「不信」も招いてきた。


「こんなゴミがなぜ芸術なのか」

「ゴミで金儲けする詐欺」

「なんでも現代美術になる」

「現代美術は言った者勝ち」……


このような外部からの不信に対して、心あるインサイダーたちはまず、 知識による啓蒙や教育によって対応しようとしてきた。
アートのトレンドを追い、アートマーケットのイロハを教え、ついには、国際展やアートフェアの真似事をはじめた。

次に、ビジネスのロジックがやってきた。最初は「あえて露悪的にふるまう」ことのバリエーションだったはずが、
いつの間にか、ビジネスのロジックが優越するようになった。
明治以来の「殖産興業」がゾンビのように復活し、それに群がるギャラリストやキュレーターたちが、本物の詐欺師になった。

そして最初に戻る。
「日本には現代美術のマーケットが無い」



この国の現代美術において、啓蒙や教育も、ビジネスのロジックによる
市場の活性化も、ひとつの同じ致命的な問題を抱えている。

それは、すべてが「伝聞」である、という点だ。
確かに、優れた現代美術を見る機会は、以前より増えた。
国際展もあるし、アートフェアもある、最新のトレンドもほとんど時差なく紹介されるようになってきた。

しかし、かつてゴミかもしれなかったそれらが、まさに現代美術に変わったその瞬間に、私たちはまだ立ち会っていない。

それらは、遠く海の向こうのどこかで、誰かによって現代美術へと変えられ、その後に、私たちの前へ運ばれてきたのだ。

それらがまさに、ゴミから現代美術に変わる瞬間、その錬金術を、魔法を、私たちは目撃していない。
現代美術を理解するには、その魔法の現場に居合わせること、
あるいは「共犯」になるのが一番だ。

しかし、この国で「本場」のアートを語る者も、投機対象としての現代美術を説く者も、
誰も魔法を使えない。誰かの魔法について語るだけであり、そのことによって、
現代美術のプレイヤーたらんとしている。それこそ、本当の詐欺でなくてなんだろうか。



魔法を使えない人間が何を言おうと、何人集まろうと、現代美術は生まれない。
既存の国際展やアートフェアを模倣しても、マーケットは生まれない。

まず、限りなくゴミに近いマテリアルがある。現代美術はそこからはじまる。
どこからともなく集められたゴミが、アーティストによって魔法にかけられる。
魔法が成功するものもあれば、失敗するものもある。
成功すれば宝になるが、失敗すればゴミのままである。

しかし、重要なのは成功失敗ではなく、アーティストの使う魔法の多様さである。
現代美術の魔法はひとつではない。その魔法の多様さこそ、現代美術の本質であり、
それを目撃できる場所こそ、マーケットと呼ばれるべきなのだ。

そして、その魔法の現場に、プロセスに、立ち会うこと、「共犯」になること。
それが可能な場所こそ、現代美術のマーケットであり、教育の現場であり、
イベントであり、コミュニティなのではないか。



残念ながら、このような「現代美術マーケット論」は、この国ではまだ受け入れられそうにない。
だから、ぼくたちは「ヤミ市」として、独自に立ち上げることにした (注)

「現代美術ヤミ市」は、ゴミが現代美術になる、その魔法の現場として企画される。

アーティストも、コレクターも、
観客も、スタッフも、ゲストも、
立ち会うすべての人たちが、

現代美術の「共犯」となる。


注)「ヤミ市」という言葉を使っているのは、IDPWが主催する「インターネットヤミ市」に影響を受けているからである。
カオス*ラウンジのコアメンバーはかつて、インターネットヤミ市に参加したことがあり、その経験から本企画についての多くのヒントを得た。


黒瀬陽平 (美術家、美術批評家、カオス*ラウンジ代表)